ふしぎな深海生きもの大ずかん

なぜアカグツはヒレで歩くの?深海底でのフシギな移動術

Tags: アカグツ, 深海魚, 適応進化, 移動, ヒレ

深海底を「歩く」フシギな魚、アカグツ

深海には、私たちの想像を超えるようなユニークな姿や能力を持つ生きものたちがたくさん暮らしています。その中でも、まるで陸上を歩いているかのように、海底をヒレを使って移動するフシギな魚がいます。その名も「アカグツ」です。

アカグツは、その名の通り体が赤っぽく、平たい形をしています。そして何よりも特徴的なのが、胸ビレと腹ビレです。これらのヒレは、他の多くの魚のように泳ぐために使うというよりも、まるで短い脚のように使われるのです。アカグツは、この特別なヒレを交互に動かして、海底をゆっくりと、時にはずり這うように移動します。

なぜ、アカグツは泳ぐのではなく、海底を「歩く」のでしょうか?それは、彼らが暮らす深海の環境と、そこで生き抜くための「適応」にヒントがあります。

アカグツが暮らす深海の海底環境

アカグツは、水深100メートルよりも深い、光のほとんど届かない深海の海底に生息しています。水圧は非常に高く、温度は低い、私たち人間にとってはとても厳しい環境です。

深海の海底は、泥や砂でできていたり、岩場があったりします。アカグツは、このような海底の表面や、そこに隠れている小さな生きものを餌として探して暮らしています。

ヒレが「脚」になったワケ

多くの魚は、体をくねらせたり、尾ビレを使ったりして水中を泳ぎ回ります。しかし、アカグツは海底で生活することを選びました。海底で餌を探したり、じっとして敵から身を守ったりするためには、水中を素早く泳ぎ回る必要はあまりありません。

むしろ、海底にしっかりと体を固定し、地面の小さな凹凸を探りながら移動する方が都合が良いのです。アカグツの胸ビレと腹ビレは、長い時間をかけて海底での生活に適応するように変化してきました。ヒレの骨や筋肉が発達し、海底を押すように使えるようになったのです。まるで、陸上の動物が脚を使って地面を蹴るように、アカグツはヒレで海底を押して前に進みます。

海底を「歩く」ことのメリット

アカグツにとって、ヒレで海底を歩く移動方法には、いくつかのメリットがあります。

  1. エネルギーの節約: 深海は餌が少ないため、エネルギーを効率よく使うことが大切です。広い水中を泳ぎ回るよりも、海底をゆっくり移動する方がエネルギーの消費を抑えられると考えられます。
  2. 餌を探しやすい: 海底にいる小さなエビやカニなどを探すには、海底をじっくりと探る必要があります。歩くことで、海底のすぐそばを丹念に調べながら進むことができます。
  3. 隠れる、待つ: 海底の凹凸に紛れてじっと待ち伏せたり、敵から隠れたりするのにも適しています。素早く動くよりも、静止したりゆっくり動いたりする方が有利な場面があるのです。

このように、アカグツのフシギな「歩き方」は、彼らが暮らす深海の海底という特殊な環境で、餌を見つけ、身を守り、効率よく生きるために長い時間をかけて進化してきた素晴らしい適応なのです。

深海の移動を観察してみよう

アカグツのようにヒレで歩く深海魚は他にもいくつか種類がいます。彼らのユニークな動きを、もし映像で見ることができたら、そのフシギさにきっと驚くはずです。

私たちが普段目にする魚は、スイスイと泳ぐ姿がほとんどですね。魚のヒレには、泳ぐ以外にもバランスをとったり、止まったり、方向を変えたりと、たくさんの役割があります。深海の生きものたちは、さらにそのヒレを様々に変化させ、それぞれの環境に適応した特別な動きを身につけています。

もし深海生物に興味を持ったら、どんな体のつくりが、どんな環境で生きるのに役立っているのかな?と考えてみてください。アカグツの「歩く」ヒレのように、深海にはまだまだ私たちの知らない、生きものたちの驚きの工夫がたくさん隠されているはずです。