体のどこが光る？深海魚の発光器のフシギな形
真っ暗な深海で光る生きものたちのフシギ
太陽の光が届かない、真っ暗闇の深海。そんな世界にも、たくさんの生きものたちがくらしています。そして、その中には、自分で光を出すことができる、とてもフシギな生きものがたくさんいます。
彼らが出す光は、「生物発光（せいぶつはっこう）」と呼ばれます。これは、特別な化学反応や、体の中に住むバクテリアの力などを使って、生きもの自身が光を作り出す能力です。陸上のホタルや夜光虫も生物発光の仲間ですが、深海ではもっとたくさんの生きものが、もっと多様な方法で光を利用しています。
深海生物が光る理由はさまざまですが、彼らが体の中に持っている「発光器（はっこうき）」という器官の形や、光る場所が、その生物が深海という厳しい環境で生き残るための「適応」と深く関わっています。今回は、深海魚が体のどこを、どんな風に光らせているのか、そしてそれがどのように役に立っているのかを見ていきましょう。
光る場所によって変わる！驚きの発光器の役割
深海魚の発光器は、体のいろいろな場所にあります。そして、光る場所が違うと、その光の使い方も全く変わってきます。まるで、場所に合わせて特別な道具を使い分けるようです。
まるで釣り竿！頭や口元が光る理由
チョウチンアンコウの仲間やミツボシエナガチョウチンアンコウなどは、頭の先に「エスカ」と呼ばれる、提灯のような形の発光器を持っています。このエスカは、まるで釣り竿の先に付いたルアーのように光ります。
真っ暗な深海でこの光をチラチラさせると、小さな魚やエビなどが「なんだろう？」と近づいてきます。そして、無警戒に近づいてきた獲物を、大きな口でパクリ！ これは、餌が少ない深海で、効率よく獲物を捕らえるための、まさに「待ち伏せ漁」にぴったりの適応なのです。頭や口元を光らせるのは、獲物を自分のところに「おびき寄せる」ために役立つのですね。
光の影を消す？お腹が光る理由
ワニトカゲギスやハダカイワシの仲間など、多くの深海魚は、体のお腹側や側面に、小さな点のようたくさんの発光器を持っています。これらの発光器は、上に向かって光を出します。
なぜお腹側が光るのでしょうか？ 深海といっても、水深200メートルくらいまでの浅い深海では、まだかすかな太陽の光が上から降り注いでいます。この光を背景に、深海魚が泳いでいると、お腹の部分が影になってしまい、下から見上げた捕食者に見つかりやすくなってしまいます。
そこで、お腹の発光器を使って、上からの光と同じくらいの明るさで光を出します。こうすることで、自分の影を消して、背景の明るさに紛れることができるのです。これを「カウンターイルミネーション」と呼びます。下からの敵から自分の姿を隠すための、見事なカモフラージュの適応です。
暗闇を照らすサーチライトや目くらまし？目の周りが光る理由
目の下や周りに発光器を持つ深海生物もいます。例えば、ある種のツノザメはお腹だけでなく、目の周りも光ります。深海性のイカの中には、墨を吐く代わりに、強い光を出す液体を噴射して敵を驚かせたり、目をくらませたりする種類もいます。
目の近くが光ることで、暗闇で獲物や敵を探す「サーチライト」のように使うという説や、急に強く光って敵をひるませ、その隙に逃げる「目くらまし」として使うという説などがあります。この光は、暗闇での狩りや、危険から身を守るために役立っていると考えられています。
仲間とのサイン？体の側面や背中が光る理由
体の側面や背中に、独特のパターンで発光器を持つ深海魚もいます。ハダカイワシの仲間は、種類によって発光器の並び方やパターンが異なります。
これは、同じ種類の仲間同士が暗闇でもお互いを見つけたり、求愛したりするための「コミュニケーション」に使われていると考えられています。また、敵に襲われたときに、突然体の特定の場所を光らせて、相手を驚かせたり、自分のサイズを大きく見せたりする「威嚇（いかく）」の目的で光る場合もあります。体の光のパターンは、深海での生物の「社会性」や「防御」に関わる適応と言えるでしょう。
深海の光はフシギがいっぱい！
深海魚の発光器は、提灯のような形、点々、線、液体など、さまざまな形があり、体の頭、お腹、目、側面など、光る場所も様々です。そして、その一つ一つが、真っ暗で餌が少なく、捕食者もいる深海で生き残るための、驚くほど理にかなった「適応」の結果なのです。
深海生物の光る世界は、まだまだ解明されていない謎もたくさんあります。なぜ特定の場所が光るのか、その光の色や強さにはどんな意味があるのか、など、私たちが知らないフシギがいっぱいです。
もしかしたら、身の回りにある光るもの（LEDライト、蓄光塗料など）や、暗い場所での物の見え方などについて調べてみるのも、深海の光の世界を理解するヒントになるかもしれませんね。深海の光る生きものたちの「すごい工夫」について、ぜひ親子で話し合ってみてください。