ふしぎな深海生きもの大ずかん

深海生物の光るヒミツ!発光の驚きの使い方

Tags: 深海生物, 発光, 生物発光, 適応進化, 光

まっくらな深海で光る生きものたち

深海。そこは太陽の光がほとんど届かない、真っ暗闇の世界です。光合成をする植物は育たず、生きものたちはわずかな餌を求めて暗闇をさまよっています。光がないということは、お互いの姿を見ることも、周りの様子を知ることも難しいということ。そんな過酷な環境で、深海の生きものたちはどのようにして生き残っているのでしょうか?

深海には、自分で光りを作り出すことのできる生きものがたくさんいます。魚類、イカ、タコ、クラゲ、エビの仲間など、その種類はさまざまです。この「自分で光る能力」を、生物発光(せいぶつはっこう)と呼びます。陸上でもホタルが光るように、生きものの体の中で化学反応を起こして光を作り出すのです。

この生物発光、ただ光っているだけではありません。深海の生きものたちは、このフシギな光るチカラを、生き残るために驚くほど器用に使い分けているのです。今回は、深海生物が光をどのように使っているのか、その驚きの「使い方」に迫ってみましょう。

獲物をおびき寄せる「誘いの光」

深海は餌が少ない世界です。広い暗闇の中で、どうやって食べ物を見つけるのでしょうか?ある深海生物は、自分から光を出して、獲物をおびき寄せます。

最も有名な例は、チョウチンアンコウの仲間です。彼らの頭には、竿のようなものが伸びていて、その先に光る袋(誘引突起といいます)がぶら下がっています。この光は、深海に住む小さな魚やイカにとっては、まるで美味しそうなプランクトンや小魚の群れのように見えます。獲物が光に引き寄せられて近づいてきたところを、大きな口でパクリ!

まるで釣りのルアーのように光を使うことで、チョウチンアンコウは動き回って餌を探す大変さを減らし、効率よく獲物を手に入れているのです。他の多くの深海アンコウの仲間も、このように光を「餌を捕まえるための道具」として利用しています。

敵から身を守る「防御の光」

光は、獲物を呼ぶだけでなく、敵から身を守るためにも使われます。その使い方も、実にさまざまです。

仲間とコミュニケーションをとる「合図の光」

陸上のホタルが光で仲間を見つけ、求愛の合図を送るように、深海でも光はコミュニケーションに使われます。

例えば、イカの仲間には、体の表面にさまざまな形の発光器を持つものがいます。これらの発光器を点滅させたり、光の強さや色を変えたりすることで、仲間同士で合図を送り合っていると考えられています。求愛のサインや、群れの中での情報交換など、まだ全ては解明されていませんが、光が深海のコミュニケーションツールとなっているのです。

魚の仲間でも、特定の光り方でオスメスが出会ったり、群れを維持したりしている可能性が研究されています。光のパターンやタイミングは、種類によって異なり、まるでそれぞれ独自の「光の言葉」を持っているようです。

暗闇で周りを見る「探索の光」

深海はほとんど真っ暗ですが、生物の中には、自分自身が発した光で周りを照らし、獲物や敵を探すものがいます。特にユニークなのは、赤い光を出す深海魚がいます。

水の中では、光は波長(色)によって届く距離が異なります。赤い光は、水に吸収されやすいため、遠くまで届きにくい性質があります。しかし、深海生物の多くは、赤い光を見ることができません。

そこで、赤い光を出せる深海魚(例:ワニトカゲギスなど)は、自分だけが見える「赤いサーチライト」のように光を使い、他の生物に気づかれずに周りの様子を探ることができるのです。獲物や敵をこっそり見つけるのに、とても有利な能力と言えるでしょう。

まとめ:深海生物の光る適応

深海生物の生物発光は、単に暗闇で光るというだけでなく、獲物を誘き寄せたり、敵から身を守ったり、仲間とコミュニケーションをとったり、周りを探したりと、生き残るためにさまざまな目的に合わせて進化してきた驚きの適応能力です。

光り方一つをとっても、光の色、強さ、点滅のパターンなど、種類によって千差万別です。これは、それぞれの生物が暮らす深さや、周りの環境、そしてどんな生物と関わっているかによって、最も効果的な光の使い方を選んできた結果と言えるでしょう。

深海の生きものたちが持つ「光る」という能力は、過酷な環境でもたくましく生き抜くための、まさに「光るヒミツ」がたくさん詰まっているのです。深海生物のフシギな光について調べてみると、面白い発見があるかもしれませんね。光の実験や、身近な光るものを観察してみるのも面白い自由研究になるかもしれません。