姿を隠して生き残る!深海生物のフシギな擬態のヒミツ
深海の暗闇で「見えない」ふしぎ
深海は、太陽の光がほとんど届かない、真っ暗な世界です。このような場所で生きる生物たちは、どのように敵から身を守り、あるいは獲物に気づかれずに近づくのでしょうか? そこには、光も形も色も意味をなさないような極限環境だからこそ生まれた、驚きの「擬態」や「カモフラージュ」のヒミツが隠されています。
透明になって姿を消す!?
浅い海の生物でも透明なものはいますが、深海には驚くほど多くの透明な生きものがいます。クラゲの仲間や、オキアミ、イカの一部などが、まるでガラスのように透き通った体を持っています。
なぜ透明だと深海で隠れることができるのでしょうか? 深海では光がほとんどないため、たとえ形があっても、光を反射したり吸収したりする「色」や「模様」がないと、見えにくくなるのです。透明な体は、背景の色(真っ暗な水の色)と一体化し、体の形そのものを見えにくくする効果があります。特に、体の中に消化器官など色のついた部分がある生物は、その部分だけを小さくしたり、光を散乱させにくい構造にしたりと、さらに見えにくくするための工夫をしています。
もしあなたが深海にいて、周りが真っ暗だったら…形のない透明な敵が近づいてきても、気づくのはとても難しいでしょう。透明な体は、深海という特殊な環境で、姿を消すための素晴らしい適応なのです。
深海で「赤色」が有利なわけ
深海魚には、鮮やかな赤い体色をした種類が多くいます。例えば、アカマンボウや一部のエビなどがそうです。浅い海なら赤色はとても目立ちますが、なぜ深海では有利なのでしょうか?
これは、光の性質に関係があります。太陽の光は、海水中を通るときに、色によって届く深さが違います。赤い光は水に吸収されやすく、比較的浅い場所でほとんど届かなくなってしまいます。そのため、赤い体色の生物は、赤い光が届かない深い場所では、真っ黒に見えるのです。
真っ暗な背景の中で真っ黒に見えることは、姿を隠す上でとても効果的です。敵から見つかりにくく、獲物にも気づかれにくい。赤い体色は、深海の暗闇に溶け込むための「カモフラージュ」として機能しているのです。
光を使った「カモフラージュ」? カウンターイルミネーションのふしぎ
深海には、自分自身で光を作り出す「発光」能力を持つ生物がたくさんいます。この発光は、仲間とのコミュニケーションや獲物を誘い出すためなど、様々な目的で使われますが、中には「カモフラージュ」のために光を使うものがいます。これを「カウンターイルミネーション」と呼びます。
これは特に、中深層(水深200m〜1000mくらい)でよく見られる適応です。この深さでは、わずかですが海面から弱い光が届いています。この弱い光は、下から見上げた時に、生物のシルエットを浮かび上がらせてしまうことがあります。しかし、カウンターイルミネーションを持つ生物は、お腹側にある発光器から、上から差し込む光と同じくらいの強さの光を出すのです。
まるで、自分の体にライトを当てて、シルエットを消してしまうようなイメージです。下から見上げる敵は、背景のわずかな光の中に生物の形を見つけることができず、まるでそこにいないかのように錯覚してしまいます。
ハダカイワシやホタルイカの仲間などが、このカウンターイルミネーションを使って身を守っています。これは、深海ならではの光環境に適応した、とても巧妙な隠れ方と言えるでしょう。
海底になりすます体の形
深海には、海底の泥や岩、サンゴなどにそっくりな体の形や模様を持つ生物もいます。例えば、海底でヒレを使って歩くアカグツは、平たい体にゴツゴツした質感が、海底の岩や堆積物によく似ています。また、一部のタコやカニの仲間は、体の表面に周りの泥や砂、小さな石などを付着させて、まるで海底の一部になったかのように見せかけることができます。
じっと海底に潜んで、敵が通り過ぎるのを待ったり、獲物が近づいてくるのを待ち伏せたりするのに効果的なカモフラージュです。
深海生物の隠れる工夫は自由研究のヒントに?
深海生物たちの「隠れる」ための様々な工夫は、本当にふしぎで面白いですね。透明な体、赤い体色、光を使ったカモフラージュ、海底になりすます形…。
これらの深海生物の隠れ方のヒミツは、身近なものでも考えてみることができます。例えば、「透明な袋は、どんな色の背景だと一番見えにくくなるかな?」「赤い色の折り紙は、暗い部屋だとどう見えるかな?」「光を使って物の形を消すにはどうしたらいいかな?」など、簡単な実験や工作を通じて、深海生物たちの clever(かしこい)な適応について、さらに深く考えてみるのも面白いかもしれませんね。
深海生物たちの「隠れる」能力は、彼らが長い年月をかけて、過酷な深海という環境で生き残るために進化させてきた、まさに驚くべき適応の結果なのです。