なぜ深海の生きものは黒や白が多いの?隠れるためのフシギな色のヒミツ
真っ暗な深海で見かける意外な体色:黒と白
私たちの住む世界では、周りの景色に溶け込んだり、鮮やかな色で仲間を見つけたりするために、生きものはさまざまな色を持っています。でも、太陽の光が全く届かない真っ暗な深海ではどうでしょう? そんな場所にも、たくさんの生きものが暮らしていますが、彼らの体色にはある特徴が見られます。それは、黒や白といった、一見地味に思える色が多いことです。
なぜ、深海の生きものは黒や白の体色を持つことが多いのでしょうか? それは、彼らが過酷な深海で生き残るための、 clever (クレバー) な「適応(てきおう)」の結果なのです。
暗闇に「溶ける」黒色のヒミツ
深海は太陽の光が届きませんが、生物自身が光る「生物発光(せいぶつはっこう)」という現象が見られます。特に、自分の身を守るために光を出して敵を驚かせたり、逆に敵を誘い込んだりする生きものがいます。
このようなわずかな光がある環境で、黒い体はとても役に立ちます。なぜなら、黒色はほとんど全ての光を吸収するからです。体の表面が黒いと、周りの生物が発光した光が体に当たっても、その光を反射することがありません。真っ暗な深海では、わずかな光の反射でも目立ってしまうことがありますが、黒い体はそれを防ぎ、「そこに何もいない」かのように見せかけることができるのです。
まるで暗闇そのものに溶け込んでしまうような、素晴らしいカモフラージュ(隠れるための工夫)の技ですね。全身が真っ黒なクロアンコウや、深い海に住むカニの中にも、真っ黒な種類がいます。彼らはその黒い体で、敵から見つかりにくく、獲物にも気づかれにくいように暮らしているのです。
エネルギーを「節約」する白色のヒミツ
一方、白い体を持つ深海生物もたくさんいます。こちらは黒色とは少し違う理由で白いと考えられています。
色の元になる「色素(しきそ)」を作るには、生きものはエネルギーを使います。光が全く届かない深海では、体の色で自分を目立たせたり、逆にカモフラージュしたりする必要性が低い環境もあります。そのような場合、色素を作るエネルギーを節約し、生きるための他の活動(呼吸や動きなど)に回した方が、生き残る上で有利になることがあります。その結果、色素をあまり持たない、白っぽい体になる深海生物がいると考えられています。
また、深海の海底には、白い堆積物(たいせきぶつ)が積もっている場所もあります。そのような場所では、白い体は背景の色に紛れて、隠れるのに役立つ場合もあります。
さらに、深海にある熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)や冷湧水帯(れいやくすいたい)といった特殊な環境には、白い体をしたエビやカニ、そしてチューブワームなどが多く見られます。これらの生きものは、周りの環境にある硫化水素(りゅうかすいそ)などの化学物質を使ってエネルギーを作る微生物と共生していたり、自ら化学合成を行ったりして生きています。このような環境では、光合成ができない代わりに化学合成がエネルギー源となるため、体色を維持するためのエネルギーを省くことが、生きる上で重要になるのかもしれません。
深海の「色」から環境を想像してみよう
深海の生きものの体色が、黒や白に分かれているのは、彼らがそれぞれの生きる場所や生活スタイルに合わせて、光環境やエネルギー事情に適応した結果です。黒い体は光から身を隠すための「吸収」のプロ、白い体はエネルギーを節約するための「省エネ」のプロと言えるかもしれません。
深海の生きものの体の色を観察する時、それは単なる見た目の色だけでなく、その色が深海のどんな環境で、どのように生きるために役立っているのかを想像してみると、さらに面白く感じられるはずです。
もし、身近なところで色の不思議を調べてみたくなったら、例えば黒い服と白い服を着たとき、どちらが太陽の光を吸収して暑くなるか比べてみたり、絵の具を混ぜて色を作るときにどんな変化が起きるか試してみたりするのも、色の性質について学ぶ良いヒントになるかもしれませんね。深海の生きものの体色のフシギから、私たちの周りの世界にもつながる発見があるかもしれません。