ふしぎな深海生きもの大ずかん

なぜ深海の生きものは大きくなるの?深海巨大症のヒミツ

Tags: 深海巨大症, 適応進化, 深海生物, 体の大きさ, ダイオウイカ, ダイオウグソクムシ

なぜ深海の生きものは大きくなるの?深海巨大症のフシギなヒミツ

深海は、光がほとんど届かず、水温が低く、そして何よりも地球上のどこよりも高い水圧がかかる、生きものにとってとても厳しい環境です。餌も少なく、生き残るためには特別な工夫が必要です。

そんな過酷な深海に暮らす生きものたちの中には、私たちを驚かせるフシギな特徴を持つものがたくさんいます。その一つに、「体がとても大きくなる」というものがあります。浅い海にいる同じ種類の仲間や、近い種類の生きものと比べると、信じられないくらい巨大になることがあるのです。この現象は「深海巨大症(しんかいきょだいしょう)」と呼ばれています。

ダイオウイカや、ダンゴムシの仲間であるダイオウグソクムシなどが、深海巨大症の代表的な例としてよく知られていますね。しかし、なぜ厳しい環境の深海で、体が大きくなるという現象が起こるのでしょうか?実は、その理由はまだ完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの説が考えられています。

過酷な深海で「大きい体」が有利になる?

深海で体が大きくなることが、生き残るための「適応」だと考えられる理由をいくつか見ていきましょう。

1. 低い水温への適応

深海の多くの場所では、水温が一年を通してほとんど変わりません。そして、その水温はとても低い(おおよそ2℃〜4℃)ことが多いです。体が冷たい環境にいると、生きものの体の活動(代謝)はゆっくりになります。ゆっくりと活動する代わりに、体はゆっくりと成長し、寿命が長くなる傾向があります。

寿命が長くなると、体が大きくなる時間も長くとれますね。また、体が大きい方が、体積に対する表面積の割合が小さくなります。表面積が小さいと、冷たい水に触れる面積が減り、体温が奪われにくくなる、という考え方もあります。これは、熱を逃がしにくい構造として、冷たい環境で有利に働く可能性があるのです。

2. 少ない餌への適応

深海は、海の表面近くから食べ物が沈んでくるのを待つ場所です。そのため、いつでも豊富に餌があるわけではありません。餌が少ない環境で体が大きくなるというのは、一見フシギに思えるかもしれませんね。

しかし、体が大きいということは、一度にたくさんの餌を食べられたときに、それを効率的に貯め込んで次に餌に出会うまでの長い時間を乗り切れる可能性があります。また、体が大きい方が、動きをゆっくりにすることでエネルギーの消費を抑えられるという考え方もあります。少ないエネルギーで長い時間生きられるようになるのです。

3. 捕食者からの防御や繁殖

体が大きいことは、敵に襲われにくくなるという点でも有利です。小さな生きものから見れば、大きな生きものは手ごわい相手ですから、襲われにくくなるかもしれません。

また、体が大きいメスは、よりたくさんの卵を産むことができる可能性が高いです。厳しい深海で子孫を確実に残すために、体が大きいことが有利に働くこともあるでしょう。

深海巨大症の代表的な生きもの

これらの生きものの巨大な体は、ただ大きいだけでなく、低い水温や少ない餌といった深海の環境で生き抜くための、長い年月をかけた「適応」の結果だと考えられています。

フシギな巨大化から見えてくる適応の多様性

深海巨大症は、深海生物の適応進化の多様性を示す一例です。全ての深海生物が巨大化するわけではありません。体が小さくしてエネルギー消費を抑える生きものもいれば、ユニークな捕食方法や防御方法を発達させた生きものもいます。

過酷な環境だからこそ、生きものたちはさまざまな工夫を凝らし、それぞれの方法で生き抜いています。深海巨大症のように、私たちにはフシギに見える体のつくりも、その生きものにとっては深海で生き残るための大切な能力なのです。

身近な生き物でも、住んでいる場所の温度や餌の量によって、体の大きさが変わる種類がいるかもしれませんね。深海生物の巨大化のフシギをきっかけに、身の回りの生きものの大きさと環境の関係を調べてみるのも面白い発見があるかもしれません。

深海のフシギな生きものたちの適応進化について、もっと知りたい!と感じてもらえたら嬉しいです。