ふしぎな深海生きもの大ずかん

まるで望遠鏡!デメニギスのチューブアイは暗闇で光を探す目

Tags: 深海生物, デメニギス, 目, 適応進化, 生態

まるで宇宙船?透明な頭を持つふしぎな魚

広い広い海の一番下、太陽の光がほとんど届かない場所が深海です。そんな真っ暗な世界で、生きものたちはどのように暮らしているのでしょうか。特に、「見る」という能力は、光がない深海ではどうなっているのか気になりますね。

深海には、私たちが見たこともないような、とても変わった体を持つ生きものがたくさんいます。今回ご紹介するのは、「デメニギス」というふしぎな魚です。デメニギスは、その見た目がとてもユニークで、まるで宇宙船に乗っているかのような透明な頭を持っています。そして、その透明な頭の中には、さらに驚きの「目」が隠されているのです。

上を向いた望遠鏡?「チューブアイ」の秘密

デメニギスの最も特徴的な部分は、その目です。まるで望遠鏡のような形をした、筒状の目を二つ持っています。この目は「チューブアイ」と呼ばれ、常に上の方を向いています。

なぜ、デメニギスの目は筒状で、上を向いているのでしょうか? これは、光がほとんど届かない深海という環境で生きるための、デメニギスにとっての「特別な工夫」なのです。

太陽の光は、海の表面から深くなるにつれてどんどん弱くなっていきます。深海まで届く光は、ほとんどありません。しかし、全く光がないわけではありません。水面からはごくわずかな光が差し込んできたり、深海に住む他の生きものが自分で光を出したりすることがあります。

デメニギスのチューブアイは、このわずかな光を効率よく集めるために、筒状の形をしています。筒の内側には光を感じる細胞がたくさん並んでいて、まるで光をキャッチするアンテナのようになっています。そして、目が上を向いているのは、水面から差し込むわずかな光や、自分の上にいる生きものが出す光を少しでも早く見つけるためだと考えられています。

透明な頭が「見える」を助ける

デメニギスのもう一つの大きな特徴は、頭が透明になっていることです。ドーム状になった透明な部分は、目を守る役割があると考えられています。柔らかいゼラチン質でできていて、敵に襲われたときなどに大切なチューブアイを保護してくれるのです。

さらに、この透明な頭のおかげで、デメニギスは上を向いている目だけでなく、横や下の様子もある程度見ることができると考えられています。透明な部分を通して、チューブアイを少し動かしたり、あるいはチューブアイの脇にある小さな目(これは横や下を見ることができるようです)を使ったりして、周囲の光るものを探すことができると言われています。

つまり、デメニギスは、筒状で上向きのチューブアイでわずかな光を捉え、透明な頭で広い範囲を見回しながら、深海の暗闇で餌や敵を探しているのです。

深海で生き残るためのユニークな適応

デメニギスのチューブアイは、暗く、餌も少ない深海という厳しい環境で生き残るために、何百万年もの長い時間をかけて獲得してきた体のつくりです。このような体のつくりや能力のことを「適応」と呼びます。深海生物のふしぎな姿の多くは、彼らがそこで生きていくための大切な「適応」の結果なのです。

デメニギスのチューブアイのように、暗い場所でわずかな光を見つける仕組みは、普段の生活の中にもヒントがありますね。例えば、夜に遠くの小さな光が見えにくいとき、目を細めたり、手で周りの光をさえぎったりすることがあります。また、光を一点に集めるレンズの働きなども、光をどう捉えるかという点では共通しています。

デメニギスのチューブアイは、深海の光の少ない世界で、効率よく光を集め、餌を探し、危険を避けるための、まさに「生きるための特別な目」なのです。彼らのふしぎな姿を知ることで、深海という世界の面白さや、生きものたちの適応進化のすごさを感じていただけたら嬉しいです。