ふしぎな深海生きもの大ずかん

体の光は借り物!?深海生物と発光バクテリアのフシギな共生関係

Tags: 深海生物, 適応進化, 発光, 共生, ハダカイワシ

暗闇を照らす深海の光

深海は太陽の光がほとんど届かない、真っ暗な世界です。そんな場所で生きる深海生物の中には、自分自身で光を作り出す「発光生物」がたくさんいます。光を使って仲間とコミュニケーションをとったり、獲物をおびき寄せたり、敵から身を守ったりと、深海でのサバイバルに欠かせない能力となっています。

ところで、この光の作り方には、いくつかの種類があることをご存じですか?自分で体の中で化学反応を起こして光る生物もいれば、実は「光るバクテリア」の力を借りて光っている生物もいるのです。今回は、深海生物と発光バクテリアの、まるで共同作業のようなフシギな関係に迫ってみましょう。

バクテリアと深海生物の「共同生活」

深海には、自分自身で光を作り出すことができる特別なバクテリアが存在します。これらのバクテリアは、普段は海のあちこちに漂っています。そして、ある特定の深海生物と出会うと、その生物の体の中にある特別な「光る袋」(これを「発光器」と呼びます)に住みつくことがあります。

例えば、大きな群れを作って泳ぐハダカイワシの仲間や、鎧のようなウロコを持つマツカサウオなどが、この発光バクテリアと共同生活を送ることで知られています。生物はバクテリアに安全な住処と栄養を与え、バクテリアは代わりに光を提供します。まるで、お互いに助け合って生きている、フシギな「共生(きょうせい)」という関係です。

なぜバクテリアの光を借りるの?

自分で光を作り出す化学反応は、エネルギーをたくさん使います。一方、光るバクテリアに住んでもらえば、生物は光を作るための複雑な仕組みや、それに必要なエネルギーを自分で用意する必要がありません。バクテリアにとっても、深海の広大な世界を漂うよりも、生物の体内の発光器という安全な場所で、安定した環境と栄養を得られるメリットがあります。

このバクテリアの光を利用する仕組みは、深海生物が暗闇で生き残るための強力な「適応」として進化してきました。彼らは、この借り物の光を様々な目的に利用します。

光るバクテリアの不思議な世界

この発光バクテリアによる光は、生物が自分で光る場合と少し違う点があります。それは、バクテリアが生きている限り、ほとんど常に光り続けていることです。自分で光る生物は、光をつけたり消したり、強さを変えたりと、光をコントロールできる種類が多いのですが、バクテリア共生型の光は、基本的に一定の明るさで光り続けます。(ただし、生物側が発光器を覆うシャッターのような仕組みで光を調整することはあります。)

この常に光っているという性質も、深海の特定の環境や生態に適応していると考えられます。例えば、常に下からの光で影を消す「カウンターイルミネーション」には、光が途切れない方が効果的です。

深海生物と発光バクテリアの共生関係は、自然界における生物同士の助け合い、そして過酷な環境で生き残るためのユニークな戦略を示しています。自分で全てをまかなうのではなく、他の生き物と協力することで、よりたくましく深海を生き抜いているのです。

想像してみよう!

もし、あなたの家に光るバクテリアが住んでくれたら、どんなことに使えるでしょう?夜に本を読む時?暗い場所を歩く時?それとも、何か全く新しい使い道があるかもしれませんね。

このような深海生物の体のフシギな仕組みや、他の生物との関わりは、私たちの身の回りの光(蛍光灯やLEDなど)の仕組みや、アリとアブラムシのように助け合って生きる他の生物の例を調べるヒントになるかもしれません。深海には、まだまだ私たちが知らない驚きがたくさん隠されているのです。