なぜメンダコは丸いの?深海で生きるフシギな体のつくり
まんまるボディと耳がチャームポイント! 人気者メンダコ
深海には、地上や浅い海では想像もできないような、ふしぎな姿をした生きものたちがたくさん暮らしています。その中でも、まるでキャラクターのように愛らしい姿で私たちを魅了するのが「メンダコ」です。
丸くて平たい体、そして頭の上からぴょこんと生えた「耳」のようなヒレが最大の特徴です。多くのタコは、体を覆う外套膜(がいとうまく)が細長く、スリムな体をしていますが、メンダコはなぜこんなにも丸い形をしているのでしょうか? そして、あの耳のようなヒレは何のためにあるのでしょう?
このユニークな体のつくりには、水深200メートルよりも深い、暗くて水圧の高い深海で生き抜くための、驚くべき「適応」のヒミツが隠されているのです。
丸い体は深海の圧力に耐えるため?それとも…
深海の一番の特徴は、地上では考えられないほどの高い水圧です。水深が10メートル深くなるごとに約1気圧ずつ増える水圧は、メンダコが暮らすような水深数百メートルの場所では、私たちの体が感じている圧力の何十倍、何百倍にもなります。
「なぜ潰れない?深海の生きものが高水圧で生きるフシギな体のつくり」の記事でも触れましたが、深海生物の体は、この高水圧に耐えるために様々な工夫をしています。メンダコもその一つです。
メンダコの体の約90%は水分でできていて、骨格や硬い組織がほとんどありません。また、体を支える筋肉も少なく、ゼラチン質のようなプルプルとした構造になっています。このような体のつくりは、外部からの高い水圧を体全体で受け止め、体の中の水分と均等な圧力を保つことで、潰されないようにするのに役立っていると考えられています。
そして、丸くて平たい形も、この水圧との関係が深いのかもしれません。丸い形は、特定の場所に圧力が集中しにくく、広い面積で水圧を分散させる効果があるとも考えられます。また、フワフワと漂う浮遊生活を送る上で、体の形が抵抗を減らし、効率よく水中を移動したり、静止したりするのに有利なのかもしれません。
耳みたいなヒレでフワフワお散歩!
メンダコのもう一つのチャームポイントは、頭の上にある大きな2枚のヒレです。これがまるで耳のように見えることから「メンダコ」という名前がついたとも言われています。
多くのタコやイカは、漏斗(ろうと)と呼ばれる管から水を勢いよく吹き出して、ジェット推進で素早く移動します。メンダコにも漏斗はありますが、あまり発達しておらず、主に呼吸に使われているようです。
では、メンダコはどうやって移動するのでしょう? 実は、メンダコはこの耳のような大きなヒレをパタパタと羽ばたくように動かして、水中をゆっくりと、まるでフワフワと漂うかのように泳ぎます。この泳ぎ方は、深海の静かでエネルギー効率が求められる環境に適していると考えられています。素早く動く必要がない代わりに、小さなエネルギーで長時間水中を移動したり、同じ場所にとどまったりできるのです。
さらに、メンダコは足(腕)の間に膜が発達していて、これを広げて傘のようにすることで、より安定して浮遊したり、沈む速度を調整したりすることもできます。
短い足、吸盤なし…深海での暮らしに合わせた工夫
メンダコの足は他のタコに比べてとても短く、吸盤もあまり発達していません。これは、メンダコが海底を這い回って生活するよりも、水中でフワフワと漂いながら暮らすことが多いことに関係しています。海底の獲物を追いかける必要がない代わりに、浮遊生活に特化した体のつくりになっているのです。
また、真っ暗な深海で獲物を見つけるために、目は比較的大きく発達しています。深海の発光生物が出すわずかな光や、獲物の影を捉えるのに役立っていると考えられています。
メンダコの体に学ぶ、環境への適応
メンダコの丸い体、耳のようなヒレ、そしてゼラチン質の体は、どれも水圧が高く、餌が少なく、暗いという深海の厳しい環境で生き残るための素晴らしい「適応」の結果です。
あの愛らしい姿は、ただ可愛いだけでなく、深海という特殊な世界で進化してきた証なのです。メンダコの体のつくりについて調べてみると、深海生物がどのように環境に適応してきたのか、その多様でフシギな世界が見えてくるはずです。
もしメンダコについてもっと知りたくなったら、ぜひ図鑑やインターネットでその生態について調べてみてください。そのユニークな体のつくりや泳ぎ方から、深海生物の生き残り戦略について考えるのは、とても面白い学びになるでしょう。例えば、メンダコの泳ぎ方から、水中を効率よく移動する方法について考えてみたり、身の回りの水の実験(ペットボトルを潰す実験など)を通して深海の圧力を想像してみたりするのも良いかもしれませんね。