ふしぎな深海生きもの大ずかん

なぜオオグチボヤは大きな口で立っているの?海底で栄養をキャッチする適応

Tags: オオグチボヤ, 深海生物, 適応進化, 濾過捕食, 食性

まるで「立つ袋」?フシギな姿のオオグチボヤ

深海底を探検すると、驚くほどたくさんのユニークな生きものたちに出会えます。その中でも、まるで海底に立つ袋のような、とても変わった姿をしているのが「オオグチボヤ」です。

オオグチボヤは、体長が最大で20センチメートルほどになる大きなホヤの仲間です。海底の岩などにくっついて、ピンと体を立て、その名の通り、体の半分以上を占めるような大きな口を上に向けて開いています。なぜ、こんなフシギな姿をしているのでしょうか?そして、この大きな口で一体何をしているのでしょう?

実は、この変わった体のつくりこそが、深海の厳しい環境で生き残るための、オオグチボヤの素晴らしい「適応」なのです。

動かずに食べる!「濾過捕食」という生き方

深海は、地上の海に比べて食べものがとても少ない場所です。太陽の光が届かないため、植物プランクトンがほとんど育たず、餌となる小さな生きものも少ないのです。そんな環境で、オオグチボヤはどうやってご飯を食べているのでしょうか?

オオグチボヤは、自分で泳ぎ回って餌を探すのではなく、海底にしっかりと体を固定しています。そして、上向きに開けた大きな口から、周りの海水を次々と体の中に取り込みます。

体の中には、細かく網のような構造があります。この網は、海水と一緒に吸い込んだ小さな生きもの(プランクトン)や、海の雪と呼ばれるデトリタス(海に漂う生物の死骸や排泄物などが分解されてできた小さな粒)をキャッチする役割をしています。

そう、オオグチボヤは、海水を「濾しとる(こしとる)」ことで、餌を捕まえているのです。これを「濾過捕食(ろかほしょく)」といいます。まるで天然のろ過装置のように、周りの海水中にある栄養を効率よく集めているのですね。

大きな口で「立ち続ける」ことの理由

オオグチボヤが大きな口を上に向けてピンと立っているのにも理由があります。

一つは、効率よく海水を吸い込むためです。海底のすぐ上には、プランクトンやデトリタスを含んだ海水が流れています。大きな口を上流に向けて開いていれば、動かなくても自然と餌を含んだ海水が口の中に入ってきやすくなります。

もう一つは、エネルギーの節約です。泳ぎ回って餌を探すには、たくさんのエネルギーを使います。しかし、オオグチボヤのように体を固定して濾過捕食をすれば、使うエネルギーを最小限に抑えることができます。食べものが少ない深海では、エネルギーを上手に使うことが、生き残るためにとても大切なのです。大きな口でじっと立っている姿は、深海の「省エネごはん術」と言えるかもしれません。

深海の「濾す」工夫を考えてみよう

オオグチボヤの濾過捕食の仕組みは、私たちの身の回りにある「濾す」仕組みと似ていますね。例えば、コーヒーを淹れるときのフィルターや、水道水の浄水器なども、同じように細かいものを取り除く仕組みを使っています。

もし、オオグチボヤのように「濾過捕食」で餌を捕まえる深海生物についてもっと知りたいと思ったら、身近な「濾過」の仕組みについて調べてみるのも面白いかもしれません。どうすれば効率よく水をきれいにできるか、どんな細かいものまで取り除けるかなど、オオグチボヤの大きな口のように、いろいろな「濾す」工夫を発見できるはずです。

まとめ

オオグチボヤの大きな口で海底に立つフシギな姿は、食べものが少ない深海で効率よく栄養を手に入れるための、見事な適応進化の形です。動かずに周りの海水を濾しとる「濾過捕食」というユニークな方法で、オオグチボヤは厳しい深海の環境を生き抜いています。

深海には、オオグチボヤのように、その体のつくり一つ一つに、生きるための驚きの工夫が隠されています。次はどんなフシギな生きものに出会えるか、楽しみにしていてくださいね。