ふしぎな深海生きもの大ずかん

まるで省エネモード!深海魚のフシギな呼吸のヒミツ

Tags: 深海魚, 適応進化, 呼吸, 低酸素, 代謝

深海は酸素が少ないって知っていましたか?

深海と聞くと、真っ暗で、水圧が高くて、とても冷たい世界を想像するかもしれませんね。でも実は、深海にはもう一つ、生きものにとって厳しい環境があります。それは「酸素が少ない」ということです。

わたしたちが呼吸している空気には、酸素がたくさん含まれています。水の中にも酸素は溶けていますが、深い場所になればなるほど、その量は少なくなってしまうことがあります。なぜなら、深海では植物が光合成をして酸素を作ることもできませんし、水面に近い場所で作られた酸素も、深い場所まで届きにくいからです。さらに、微生物が海底に沈んだ有機物を分解する際にも酸素が使われます。

そんな、酸素が少ない過酷な深海で、深海魚たちはどうやって息をして生きているのでしょうか? そこには、まるで「省エネモード」のような、深海魚たちの驚きの適応のヒミツが隠されています。

ゆっくり生きることで酸素を節約

深海魚たちが少ない酸素で生きられる大きな理由の一つは、彼らがわたしたちのような浅い海や陸上の生きものに比べて、体のエネルギー消費がとても少ないことです。まるで、電池を長持ちさせるために、スマートフォンを「省エネモード」にするようなイメージです。

エネルギーを使う量が少なければ、当然、必要とする酸素の量も少なくて済みます。深海魚の多くは、あまり活発に泳ぎ回ったりしません。エサが少ない環境なので、ムダな動きをせず、じっとエサが来るのを待っている種類の魚が多いのです。

また、この記事でも紹介しているように、多くの深海魚は、骨や筋肉がわたしたちの知っている魚に比べて発達していません。ゼラチン質でブヨブヨした体を持つ種類もいます。これも、体を動かすのに必要なエネルギーや、体を作るのに必要なたんぱく質などを減らすことで、全体的な代謝(エネルギーを使って体を維持する活動)を抑え、酸素の消費量を減らすことにつながっているのです。

酸素を効率よく使う工夫も

深海魚の中には、少ない酸素を効率よく取り込むための体のつくりや機能を持っているものもいます。

例えば、呼吸をするための「エラ」の構造が、水の中から少しでも多くの酸素を捉えられるように工夫されている場合があります。また、血液中の酸素を運ぶ役割をする「ヘモグロビン」という物質が、低い酸素濃度でも酸素と結びつきやすいような特別な性質を持っている深海魚もいることが分かっています。

これらの工夫によって、深海魚はわたしたち人間が活動するのに必要な酸素量よりもはるかに少ない量で、生きていくことができるのです。

深海魚から学ぶ「生きる」工夫

深海の酸素が少ない環境で、省エネ体質になったり、酸素を効率よく使う体の仕組みを持ったりと、深海魚たちは様々な方法で適応してきました。これは、彼らが何百万年もかけて、その環境で生き残るために進化させてきた能力です。

わたしたちの身近な生活でも、エネルギーを無駄にしないように工夫したり、限られた資源を大切に使ったりすることはとても大切です。深海魚たちの「省エネモード」な生き方を知ると、自分たちの生活にも何かヒントがあるかもしれませんね。

どうして深海魚は酸素が少なくても平気なの? と疑問に思ったら、彼らの体のつくりや暮らし方を思い出してみてください。そこには、過酷な環境で生き抜くための、驚くような「生きる」工夫がたくさん詰まっているのです。