なぜコウモリダコの血液は青いの?低酸素深海への適応
コウモリダコってどんな生きもの?
深海には、私たちの想像を超えるようなユニークな姿をした生きものたちがたくさん暮らしています。その中でも、まるでマントを羽織ったコウモリのような姿をしているのが「コウモリダコ」です。
コウモリダコは、水深600メートルから900メートルくらいの、太陽の光が全く届かない暗い海に生息しています。この深さの海は、水温がとても低く、そして「酸素がとっても少ない」という、生きものにとってはとても厳しい環境です。
普通の生きものなら、こんな場所では生きていけません。しかし、コウモリダコは、この過酷な環境にしっかりと「適応」して生きています。その適応のヒミツの一つが、彼らの「血液」にあるのです。
青い血液のフシギな力
私たちの体の中を流れる血液は、酸素を運ぶ大切な役割をしていますね。人間の血液は「赤い」ですが、これは血液の中に含まれる「ヘモグロビン」という物質に鉄が含まれていて、酸素と結びつくと赤くなるからです。
では、コウモリダコの血液は何色だと思いますか?
なんと、コウモリダコの血液は「青色」をしているんです!
なぜ青いのでしょうか?それは、コウモリダコの血液には、人間のヘモグロビンとは違う、「ヘモシアニン」という酸素を運ぶ物質が含まれているからです。ヘモシアニンには「銅」という金属が含まれていて、酸素と結びつくと青くなる性質があるのです。
この青いヘモシアニンが、コウモリダコが暮らす「酸素が少ない深海」で生きるための重要なカギを握っています。酸素がとっても少ない環境でも、ヘモシアニンは効率よく酸素を取り込み、体のすみずみまで運ぶことができるのです。これは、酸素が豊富な場所で力を発揮するヘモグロビンにはできない、ヘモシアニンならではの能力と言えます。
まさに、青い血液は、コウモリダコが低酸素の深海で生き残るための「スーパーパワー」のようなものですね!
青い血液だけじゃない!低酸素サバイバルの工夫
コウモリダコが低酸素の深海で生きられるヒミツは、青い血液だけではありません。彼らは他にも、エネルギーをできるだけ使わないための様々な工夫をしています。
例えば、彼らの体はプルプルとしたゼラチン質でできています。これは、筋肉をあまり使わなくてもフワフワと浮いていられるようにするためです。筋肉はたくさんのエネルギーを消費しますが、ゼラチン質の体ならエネルギーを節約できます。
また、コウモリダコは代謝のスピードがとてもゆっくりです。代謝とは、体の中で栄養からエネルギーを作り出す働きのことで、代謝が早いほどたくさんの酸素や栄養が必要になります。コウモリダコは代謝をゆっくりにすることで、少ない酸素や栄養でも生きていけるように適応しているのです。
大きな鰓(えら)を持っていることも、少ない酸素を効率よく体に取り込むための大切な適応と言えます。
コウモリダコのユニークな生態
コウモリダコは、危険を感じると、体の膜をくるっとひっくり返して、まるでパイナップルのような形になる面白い防御行動をとることがあります。この姿も、彼らが深海で身を守るためのユニークな適応と言えるでしょう。
食べるものも、深海でゆっくりと降りてくる「マリンスノー」(海の雪、プランクトンなどの死骸や排泄物)などを食べるため、素早く獲物を追いかける必要がありません。これも、エネルギー消費を抑えることにつながっています。
まとめ:深海で生き抜くための驚きの適応進化
コウモリダコの青い血液や、ゼラチン質の体、ゆっくりな代謝などは、どれも酸素が少なく、餌も少ないという厳しい深海の環境で生き残るために、長い時間をかけて獲得してきた「適応進化」の結果です。
私たちの身近な生きものとは違う、深海生物たちのフシギな体のつくりや能力を知ることは、生きものがどのように環境に適応していくのかを学ぶ面白いきっかけになりますね。コウモリダコの青い血液のヒミツをきっかけに、様々な生きものの体の仕組みや、なぜその環境にその生きものがいるのか、調べてみるのも面白いかもしれません。
例えば、血液の色が違う生きものは他にもいるかな? 身近な金属(鉄や銅など)が空気や水に触れるとどうなるかな? 高い山の上ではなぜ息が切れやすいのかな? そんな疑問から、生きものや自然のフシギについて探求を深めてみるのもおすすめです。