ふしぎな深海生きもの大ずかん

まるで網?ヤマトメリベのフシギな捕食方法のヒミツ

Tags: 深海生物, ヤマトメリベ, ウミウシ, 捕食, 適応進化

まるで網を広げるみたい!フシギな深海のウミウシ、ヤマトメリベ

深海には、地上や浅い海では考えられないような、驚きの姿や能力を持つ生きものたちがたくさん暮らしています。今回ご紹介するのは、「ヤマトメリベ」というウミウシの仲間です。

ウミウシというと、サンゴ礁などにいるカラフルで小さな生きものを想像するかもしれません。しかし、ヤマトメリベは一般的なウミウシとは少し違い、半透明でフワフワとした、まるでゼリーのような体をしています。そして何より目を引くのが、その大きな「口」です。

巨大な「フード」を広げて餌を捕らえる!

ヤマトメリベの「口」は、まるで頭巾やフードのように大きく広げることができます。体の前についているこのフードには、細かい感覚器がたくさんついています。

深海は、食べものがとても少ない世界です。そんな場所で、ヤマトメリベはどうやって餌を見つけ、捕らえているのでしょうか?

ヤマトメリベは、この大きなフードをゆっくりと広げながら、深海の底近くや、水の中を漂います。フードの表面には、水中の小さな生きものや、海底に沈んだ有機物のかけら(これを「マリンスノー」と呼ぶこともあります)を感じ取るセンサーがたくさんついています。

そして、小さな餌生物がフードの中に偶然入ってきたり、センサーが餌を感知したりすると、ヤマトメリベは素早くフードを閉じ込めます。まるで、網で獲物をすくうかのように、フードの中に入ったものをまとめて捕まえてしまうのです。

この捕食方法は、動きの速い大きな獲物を追いかけるのではなく、少ない餌が漂ってくるのを効率よく集めるのにとても適しています。エネルギーをあまり使わずに、漂っているものをまとめて手に入れる。これは、餌の少ない深海で生き残るための、ヤマトメリベの賢い工夫なのです。

フワフワな体で深海を漂う適応

ヤマトメリベの体がゼリーのようにフワフワとしているのにも理由があります。深海はとても水圧が高い環境ですが、体のほとんどが水分でできたゼラチン質の体は、高い水圧の影響を受けにくいという特徴があります。

また、こうした軽い体は、少ないエネルギーで水の中を漂ったり、少しだけ泳いだりするのにも役立ちます。大きな泳ぐための筋肉を持たなくても、フワフワと漂うことで、広い範囲を探して餌を見つけたり、危険から逃れたりすることができるのです。ヤマトメリベは、必要に応じて体をくねらせて、短い距離を泳ぐこともできます。

深海の環境に適応したユニークな姿

ヤマトメリベの「網のようなフード」を使った捕食方法や、ゼリーのようなフワフワの体は、餌が少なく、水圧が高く、暗い深海という特殊な環境で生きていくための「適応」の結果です。

浅い海で暮らすウミウシの多くは、カイメンなどを食べていますが、ヤマトメリベのように漂っている小さな餌を効率的に集めることで、深海でも生きていけるようになったと考えられます。

もし、身近な場所で網を使って何かを捕まえる様子(例えば、虫取り網や魚を捕まえる網)を見かけたら、それはヤマトメリベが深海で行っていることと似ているかもしれませんね。体の形や使う道具は違えど、「網のようにして獲物を捕らえる」という考え方は、生きものだけでなく人間の工夫にも見られるのかもしれません。

ヤマトメリベのように、深海にはまだまだ私たちの想像を超えるような、フシギで面白い適応をした生きものがたくさん暮らしています。彼らの体のつくりや能力が、どのように過酷な環境での生活を助けているのか、深掘りしてみると新たな発見があるかもしれません。